因幡の國に、何の入道とかやいふものの女、かたちよしと聞きて、人あまたいひわたりけれども、この娘、ただ栗をのみ食ひて、更に米(よね)のたぐひを食はざりければ、「かゝる異樣のもの、人に見(まみ)ゆべきにあらず」とて、親ゆるさざりけり。・・・・・・・・・・・・・朝バナナダイエットとか、グレープフルーツダイエットなど、一つの食材に集中して他のものを食べない食事法が一時的に流行ることがあります。もちろんダイエット法としては失格ですが、それ以上に栄養摂取の面で問題となりそうです。しかし世の中にはヤノマモ族のようにバナナやキャッサバ(芋)ばかり食べていたり、昔のイヌイットのように海獣ばかり食べていたりする種族も存在し、前者は高血圧が、後者は心臓血管系疾患が少なかったことが知られています。厚生労働省などは1985年に一日に30種類以上の食材を食べることを推奨していましたが、その目標は2000年に取り外されます。犬や猫を飼っている人にとっては周知の事実ですが、ドッグフードやキャットフードだけで飼うことによって、かえってペットたちが長生きするようになったことは、「自然派」にとって不都合な事実でしょう。もちろんドッグフードやキャットフードは添加物も含まれますし、ヒトが食べるものに比べて安全基準も緩いものばかりです。ヒトの食べるものに対する安全基準が緩いと怒る人も多いのですが、犬や猫はフードを一生食べ続けているのに、寿命が延びているのです。添加物を毛嫌いし、食べるものの安全性や栄養バランスに毎日気を遣っている人が、周りから見るとどうにも不健康そうに見えるのは、ストレスが大きく関係しているのではないでしょうか。キャットフードのように、人間にとっての「ヒトフード」を提唱したのは、筆者が良く紹介する三石巌でした。筆者はサプリメントの紹介文を良く依頼されるのですが、MRPの紹介のときに良く使うのが、この「ヒトフード」という概念です。しかし多くのMRPには炭水化物やタンパク質、ビタミンが含まれるものの、良質の脂肪やミネラル、抗酸化物質が含まれるものは少なく、逆にクレアチンなどを入れて筋肉系ユーザーに良い顔をしようとしたせいか、今ではMRPはそれほど人気のあるサプリメントではなくなってしまいました。もともとMRPは癌患者のために考え出されたもので、食の進まない患者でも良質の栄養を摂れるようにしたものです。これに近いものでエレンタールのようにクローン病などの患者が使う栄養食もありますが、それは消化酵素を極力使わずに消化吸収されるようにしたものなので、普通のヒトには少々不向きです。バルクアップ時には非常に使えるのですが。MRPに近いものとして、「ソイレント」が有名です。これは一週間分で65ドルと安く、完全栄養食を謳っています。「DIY Soylent」なんていうサイトもあり、自分で完全栄養食を作ろうとする動きも盛んになっています。現時点でソイレントはまだまだ不完全であり、これを食べて体調が悪くなった人が発生したという記事もみかけます。しかし筆者の予想では、次第に「ヒトフード」は改善され、洗練されて広まっていくと思われます。朝食と昼食はヒトフードで済ませ、夕食だけは食の楽しみと交流を深める場として普通の食事をするという流れが来るのではないでしょうか。