もっとも権威のある医学雑誌「Lancet」に、このような論文が掲載された。Effect of physical inactivity on major non-communicable diseases worldwide: an analysis of burden of disease and life expectancyhttp://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2961031-9/abstract内容を要約すると、運動不足によって、・冠状動脈疾患・糖尿病・乳がん・結腸がんなどになりやすく、寿命が縮まりやすい。2008年において、世界中で5700万人亡くなったうちの530万人以上は運動不足による早世だという。運動不足が解消されれば、世界平均での余命が0.68年は延長するであろうとのこと。またこれはショウジョウバエの実験ではあるが、筋肉内に含まれる酵素「MAPK(p38 MAP kinase)」が増えることによって、通常よりも50%長生きするようになったという。Researchers at Emory University School of Medicine have identified a set of genes that act in muscles to modulate aging and resistance to stress in fruit flieshttp://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111017155626.htmこのMAPKは運動によって活性化される。それはATPやカルシウムの濃度には関係なく、物理的な筋収縮によって活性化されるようだ。さらに初期の有名な研究に、1964年のハモンドによる100万人以上を追跡調査した報告がある。彼は「運動する人は運動しない人よりも遥かに死亡率が低い」と結論し、平均余命にして10~15年の差が出てくるとしている。他にも同様の研究は行われていて、その多くが平均余命にして5~10年の違いを認めている。最近では活性酸素の発生を怖がって運動を避ける人が増えてきているが、これは運動しないための言いわけでもあるだろう。運動することによって活性酸素(特にスーパーオキサイド)の発生が増えるが、それをやっつけるための酵素(SOD)も増える。SODが増えることによって、運動していない時間においても、活性酸素除去能力は高まっているわけだ。ちなみに先ほどのp38MAPKが変異したショウジョウバエに、ミトコンドリアに存在するマンガンSODを与えると寿命が延びたという。もちろんハード過ぎる運動はダメであるが、楽しみながら適度にできる運動であれば、それは確実に健康によい影響を与えてくれるのだ。