ウィンタースポーツを除けば、多くのスポーツはシーズンオフを終え、既にシーズン入りしていることだろう。シーズン中のウェイトトレーニングの方法には、選手もコーチも頭を悩ませるところ。如何に筋力やパワー、筋肉量をキープしたまま、厳しい練習と試合を乗り切っていくか。練習や試合が重なると、どうしても疲労が蓄積して怪我も多くなるし、ウェイトトレーニングの効果も出にくくなる。といってウェイトトレーニングをおろそかにすれば、筋力やパワーが減少してパフォーマンスも低下する。できるだけパフォーマンスをキープできるようにしたまま、疲労を残さないようなウェイトトレーニングの方法はないものだろうか。そこで、「ポジティブオンリー」という考え方が出てくる。ウェイトトレーニングにおける筋疲労は、その主たるものが「ネガティブ」時に起こるものである。ネガティブを適当に行うフォームだと筋肉痛も来にくいし、ネガティブ時の負荷が摩擦によって減少するマシントレーニングだと筋肉痛になりやすいのは、体験からもわかるはずだ。また実際の実験においても、トレーニング初心者にネガティブオンリーのトレーニングを行わせた結果、回復したのは1カ月近く経ってからだったという報告もある。トレーニング熟練者であっても、ネガティブをハードに行った場合、回復に9日間はかかったとされている。ポジティブオンリーであれば、回復は早いし疲労も溜まらない。またポジティブのみでも筋力はある程度アップするという研究報告も少なからず存在している。Evetovichらによれば、12週間のポジティブのみのトレーニングによって大腿四頭筋の筋力が15.5%伸びたとされており、Houshらによれば、8週間のポジティブオンリートレーニングによって大腿四頭筋の筋肉量が3.3%増え、筋力も39.7%増加したという。よって、少なくとも筋肉量やパワーをキープする効果はあるものと考えて良いはずだ。さて、ポジティブオンリーのエクササイズとして代表的なものは、「スレッド・トレーニング」である。これはパワースレッドと呼ばれる器具を押していくもので、ちょうどラグビーのスクラムで、相手を前にどんどん押していくような動きをイメージしてもらうといいだろう。押すのではなく、逆にタイヤを引っ張る「タイヤ引き」なども、ポジティブオンリーのエクササイズである。またロープ登り運動なども、降りるときに負荷をかけずにサッと降りるようにすれば、ネガティブの負荷はかからない。一般のウェイトトレーニングに応用する場合、ネガティブでは極力負荷をかけずに速めのスピードで下ろすようにするといいだろう。もちろん勢いをつけて下ろしてしまっては怪我の原因になるので、それなりにコントロールは必要である。また「ストップ・アンド・ゴー」によるエクササイズはポジティブ時のモーターユニット動員数が多く、使用重量は普通よりも下がるため、回復を図りつつパフォーマンスをキープorアップさせていくためには非常に有用である。ウェイトトレーニングにおいてネガティブは重要であるが、このようにネガティブを意識して減らす必要がある場合も、アスリートには起こり得る。常に柔軟な姿勢を保ち、そのときの自分にとって最適となる方法をチョイスするようにしたいものだ。山本 義徳