チンニングには様々なバリエーションがあり、当然ながら効果も異なってくる。また難易度も違う。中でも特に難易度の高いのが、「肩甲下筋チンニング」だ。肩甲下筋はラテン語で「Subscapularis」なので、「サブスキャプラリス・チンニング」としても良いのだが、読みにくいので「肩甲下筋チンニング」と呼ぶことにする。なお一般的にオーバーグリップで行うとプルアップ、アンダーグリップで行うとチンアップと呼ぶことになっているが、ここでは便宜上、すべて「チンニング」で統一する。◆ 肩甲下筋チンニングのやり方1. オーバーグリップあるいはパラレルグリップでバーを握る。2. 普通にチンニングを行い、上体をできるだけ高く上げる。特に上体を反らす必要はない。3. トップポジションに来たら、上体をできるだけ高い位置にキープしたまま、全身が地面と平行になるように一気に上体を後ろに倒す。4. ヒジをできるだけ伸ばした状態で、ゆっくりとスタートポジションに戻す。肩甲下筋というのは、肩関節の「内転」と「内旋」を受け持ち、腕相撲のときに良く使われる筋肉でもある。普通のチンニングでは「内転」は起こるが、なかなか「内旋」の刺激を与えるのは難しい。広背筋そのものに内旋の機能はあるが、特に内旋を重視したエクササイズが肩甲下筋チンニングである。このエクササイズでは上体を後ろに倒すとき、そして上体をゆっくりと下ろしていくときに、肩甲下筋が強く動員される。肩甲下筋はローテータカフの中でも特に筋力が強く、また筋断面積も広い。多くの競技(やり投げや野球のピッチャー、格闘技、アームレスリングなど)において肩関節の内旋は重要であるため、アスリートにお勧めしたいエクササイズでもある。またネガティブ時にはヒジを伸ばしたままプルオーバー的な動きとなるため、大円筋や広背筋の外側にも強い刺激が行く。肩甲骨の内転があまり起こらないため僧帽筋や菱形筋の関与が少なく、またヒジも伸びたままなので上腕二頭筋も働きにくい。つまり背中の広がりをつけるためにも、非常に有効なのだ。背中の広がりを求めるボディビルダーにも、強くお勧めしたい。ただしこれは非常にハードなエクササイズだ。上体を高い位置にキープできなければ意味がない。肩甲下筋チンニングを行いたいが、まだ筋力が足りなくて上手くできないという場合は、ネガティブオンリーでやってみよう。ラックにかけてあるバーや、高めの台などを使い、それに足をかける。そして上体を高い位置に持ち上げて地面と平行の状態でキープし、そこで足を離してネガティブ動作のみを行うのである。慣れるまでのうちはパラレルグリップで行い、無理なくできるようになったらオーバーグリップに移行する。そして少しずつワイドにしていき、強度を高めていこう。