「脂肪」と言う言葉に、あまり良いイメージは持たれないようです。体脂肪を増やしてしまったり、心臓血管系に悪影響を与えたりといった悪い作用があると思われがちですが、最近になって、それは脂肪ではなく、実は糖質の過剰摂取が原因であるということが判明してきました。EPAやDHAなどに代表される「良い脂肪」の存在は既に周知されているところですが、あまり知られていないのが「MCTオイル」の効果です。今回はMCTオイルについて簡単に紹介しましょう。MCTとは「Medium Chain Triglyceride(中鎖中性脂肪)」の頭文字をとったもので、食材としてはココナッツオイルやヤシ油に多く含まれます。この「中鎖」というのは何かというと、「炭素のつながり」のことです。普通の脂肪は「長鎖脂肪酸」であり、例えばパルミチン酸だと炭素が16個つながっているのですが、MCTは8個くらいしかつながっていません。もっと炭素が少ない短鎖脂肪酸もあり、酪酸や酢酸、プロピオン酸などが代表です。炭素がいっぱいある長鎖脂肪酸は消化吸収に手間がかかるのですが、MCTは消化が早く、胃腸の病気を抱えた方の特別食としてもつかわれます。また長鎖脂肪酸はミトコンドリアに運ばれるときにカルニチンを必要としますが、MCTは必要としません。つまり非常に速やかにエネルギーになるのです。MCTの消化速度は普通の脂肪の4倍であり、代謝されてエネルギーになるまでの速さは普通の脂肪の10倍だとされています。ローカーボ・ダイエットのときは、できるだけ解糖系ではなく、β酸化によってケトン体をつくる必要があります。糖質摂取が少なくてピルビン酸ができないと、オキザロ酢酸もできないため、TCAサイクルが回りにくくなります。するとMCT由来のアセチルCoAはTCAサイクルに入らず、ケトン体生成に向かいます。こうしてMCTは急速にケトン体を作り出すことができますので、速やかにケトーシスを引き起こすことができます。またエネルギーになりやすいためDIT反応も強く引き起こします。トレーニング前などに摂取すると、エネルギーアップを感じることができるはずです。なおアメリカではMCTオイルをアルツハイマーの治療に有効な医療食として認可しています。アルツハイマーの場合、脳が糖質をうまく使えなくなるのですが、ケトン体は使えます。またケトン体自体に神経をダメージから守り、炎症を防ぐ作用があるのです。注意点として、MCTオイルをいきなり大量に摂取すると、消化が早すぎて下痢することもあります。最初は1回に5g程度で試してください。一日に30g程度を小分けにし、プロテインに混ぜたり、サラダに振りかけたりして使うといいでしょう。なお加熱はあまりしないようにします。