静的ストレッチが筋力を低下させるということは一般にも知られるようになってきました。アスリートの場合はα‐γ連関の機能に障害を起こしたり、最大筋力を発揮できる筋長の変化が起こったりすることによるパフォーマンスの低下は問題です。しかし一般のトレーニーが筋肥大を目的とする場合、「対象筋の効きを良くする」という効果は無視できません。効きにくい部位に静的あるいはPNFストレッチを行ってからトレーニングを行うことで対象筋をアイソレートさせるのも、一つのテクニックとなります。ただし同じような効果を、ダイナミックストレッチでも得ることは可能です。静的ストレッチと違い、ダイナミックストレッチは逆にパフォーマンスを促進するという報告が多く見られます。ここではインターバル中にダイナミックストレッチを行うことで、乳酸濃度が低下し、回復が促進されたという報告を紹介しましょう。(※1)平均25.7歳のサッカープレイヤー10名を対象に、自転車漕ぎ運動を行わせました。MAP(Maximal aerobic power) の120%で30秒間、回転数60で漕ぎ、次の30秒間は休む。それを4セット。4セット行ったところで4分間の休憩を取り、また同じことを行います。4分間の休憩の間に何をするか。ここで3つに分かれます。何もしない群(PR)、MAPの30%で漕ぐアクティブレストを行う群(AR)、膝の曲げ伸ばしによるダイナミックストレッチを行う群(SR)の3群です。その結果、SR群は他の2群に比べ、血中乳酸濃度が明らかに低く保たれました。また疲労に到達するまでの時間も、ダイナミックストレッチ群が一番長くなっています。なおダイナミックストレッチの場合、筋力の低下は起こらないという報告が多数を占めています。2週間に渡ってダイナミックストレッチとプライオメトリクスを組み合わせたところ、垂直跳びの高さとアジリティが改善したという報告や(※2)、8週間に渡ってダイナミックストレッチをウォームアップとして行ったところジャンプパワーが改善したという報告(※3)などから考えても、ダイナミックストレッチをウォームアップやインターバル中に行うことは、筋肥大や筋力アップにおいて良い結果をもたらすと考えられそうです。※1:Effect of recovery mode on exercise time to exhaustion, cardiorespiratory responses, and blood lactate after prior, intermittent supramaximal exercise.J Strength Cond Res. 2011 Jan;25(1):205-10. doi: 10.1519/JSC.0b013e3181af5152※2:Effects of short-term two weeks low intensity plyometrics combined with dynamic stretching training in improving vertical jump height and agility on trained basketball players.Indian J Physiol Pharmacol. 2014 Apr-Jun;58(2):133-6.※3:Eight weeks of dynamic stretching during warm-ups improves jump power but not repeated or single sprint performance.Eur J Sport Sci. 2014;14(1):19-27. doi: 10.1080/17461391.2012.726651. Epub 2012 Oct 15