たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなどか生きざらむ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・筆者は2005年にアメリカのボディビルコンテストで日本人初のヘビー級優勝を遂げたのですが、その数か月後に上腕三頭筋を断裂してしまい、選手生命は事実上絶たれました。しかし今にして思えば、怪我のせいでボディビル優先の生活からトレーナーとしての仕事を優先させる生活になったことで、かえって人生に満足感を感じられるようになっています。ボディビルに文字通り命を懸けていたときのような充溢感はさすがにありませんが、自らが得た知識や経験を周りに分け与えることの悦びは、何ものにも代えがたいものです。「少しだけ蒔くものは少しだけ刈り取り、豊かに蒔くものは豊かに刈り取る」と言われますが、これは文字通り受け取っても正しいのであって、アウトプットすることにより、より多くのインプットがむしろ得られるものなのです。「どうやって勉強しているのですか」とよく訊かれますが、勉め強いるのではなく、本気で得たいと欲するのならば、自然と知識は身についてきます。好きな歌の歌詞などは、簡単に覚えられるという人も多いのではないでしょうか。とはいえ知識の定着にはコツがあります。まずは「しっかり理解して、自分の言葉に落とし込むこと」です。記憶は「意味記憶」と「エピソード記憶」に分けられますが、「しっかり理解」することによって意味記憶し、「自分の言葉で言い換える」ことによってエピソード記憶し、定着させるわけです。どうしても覚えたいことがあったら、それをブログなどにまとめるといいでしょう。周囲に公開するためには、分かりやすい文章にしなければいけません。それが記憶の定着を促進してくれるのです。次に「繰り返し」です。「教科書を7回読んだらトップになった」という人の記事を読んだことがありますが、記憶とは神経同士のつながり(シナプス)を強化することです。つまり繰り返し記憶することにより、シナプスが強化されるのです。エビングハウスの忘却曲線は有名ですが、Waterloo大学の「Curve of Forgetting」によれば、毎日数分でも復習することにより、1ヶ月後でも記憶は定着しているとされます。また忘却曲線は「意味のない文字列」の話ですので、意味のある内容ならば、本来はもっと簡単に記憶は定着可能なはずです。そしてシナプス強化のために、神経伝達物質の材料を摂取することです。記憶の場合、特に重要なのがアセチルコリンとドーパミンです。これらの材料を補給するためには、「レシチン」と「チロシン」を摂取しておくと良いでしょう。レシチンは卵黄や大豆に含まれ、チロシンはカツオやタケノコ、チーズ、大豆などに多く含まれます。サプリメントとして摂取する場合はレシチンとして一日に5g程度、チロシンとして一日に2g程度が目安となります。