血流制限しながらトレーニングすることで筋肥大や筋力向上、アンチエイジング、ケガからの回復などに効果があることは良く知られている。今回は非常に短時間のBFRによって被験者のVo2max(最大酸素摂取量)向上に効果があったとする研究(※1)を紹介しよう。Vo2maxは持久力の指標であり、有酸素性能力を判断する重要なバロメータとなる。しかし残念ながら成人後はトレーニングによってあまり向上しないと言われている。軽い重量でウェイトトレーニングをやっても伸びにくいように、ゆっくりと長時間走りこむランニングをしてもVo2maxを伸ばすための刺激とはなりにくい。そこでウェイトトレーニングのように、高強度で短時間の運動を何セットも繰り返すインターバルトレーニングが、Vo2max改善のために行われている。これとBFRを組み合わせた結果はどうだろうか?20名のベテランサイクリストを対象に、スプリントトレーニングを週2回行わせた。1セットの運動時間は30秒、インターバルは4.5分。最初は4セットとし、最終的に7セットまで増やした。BFR群は各スプリント後に仰向けになり、2分間の間、130mmHgで下肢の血流を制限した。その結果、4週間後にVo2maxを測定したところ、コントロール群が0.7%の増加だったのにたいし、BFR群は4.5%まで増加した。そしてBFR群でのみ、HIF-1αのmRNA発現が増加していたのである。HIFは低酸素状態において活性化する転写因子であり、αとβの二つのサブユニットからいる。普段はαが働いていないが、低酸素状態になるとαとβの両方が働くことができるようになり、VEGF遺伝子が活性化される。VEGF というのはVascular endothelial growth factorの略であり、血管内皮細胞成長因子のことである。つまり血管が発達するということに他ならない。他にも大きな違いではないが、PGC-1αやeNOSのmRNA増加が認められている。この研究で面白いのは、運動中ではなく、運動後に血流を制激したというところだ。また時間も一回2分間と短い。ウェイトトレーニングで同様の方法を行った場合、どのような結果になるか、今後の研究展開が気になるところである。※1:Acute and chronic effect of sprint interval training combined with post-exercise blood flow restriction in trained individuals.Exp Physiol. 2015 Sep 22. doi: 10.1113/EP085293