家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑き頃わろき住居(すまひ)は、堪へがたき事なり。・・・・・・・・・・・・・・・・・・筆者が昔使っていたジムはスタッフの血の巡りが悪いせいか、夏でも冷房をつけようとしませんでした。快適さを求めてジムの扉を開けたメンバーが、入った途端に顔をしかめるのを何度も見たものです。2006年に行われた研究では2122度でもっとも作業効率が高くなり、30度だと22度に比べてパフォーマンスが8.9%低下したという結果が出ています。(※1)また電話交換手100名を対象にした調査で、25度から室温が1度上昇するごとに、作業効率が2%低下するという報告もあります。(※2)これらはデスクワークの話ですので、トレーニングではさらに悪影響が出ることは自明でしょう。もちろん熱中症の危険も大いにあります。熱中症から身体をまもるためには、どうすれば良いのでしょうか。〇S-1のようなドリンクが勧められることもありますが、これはただの「薄い食塩水」のようなものです。トレーニング前の食事で果物を食べ、味噌汁でも飲んでおいたほうがずっとマシだと言えます。トレーニーならタンパク質は十分に摂取しているはずですが、意外に不足しやすいのが水溶性ビタミンやミネラル類です。鉄鋼労働者を対象に、酷暑下で8時間労働を行って汗からの排出を調べた研究では、3035度でビタミンCが10.7mg、ビタミンB1は183.5mcg、ナトリウムは2971mg、カリウムは439.9mg、カルシウムは82.8mg、マグネシウムは13.8mg、鉄は776.9mcg、亜鉛は681.7mcgの流出。40~43度ではビタミンCが22.5mg、ビタミンB1は305.6mcg、ナトリウムは4708.8mg、カリウムは693.5mg、カルシウムは131.3mg、マグネシウムは23.7mg、鉄は1190.7mcg、亜鉛は1230.4mcgの流出となっています。(※3)鉄鋼労働者ほどではないにせよ、酷暑のなかでトレーニングすれば、かなり大量の汗をかくはずです。このような状態が毎日のように続けば、とうぜんビタミンもミネラルも不足します。ナトリウムは食塩として、カリウムは果物やイモ類から簡単に摂れますが、カルシウムやマグネシウム、鉄、亜鉛などはマルチミネラルのサプリメントとして摂取することを念頭におくべきでしょう。もちろんビタミンB群やCも補いたいところです。夏はマルチミネラルのサプリメントをぜひ。※1:Effect of temperature on task performance in office environment※2:日本建築学会調査より※3:Relationships between micronutrient losses in sweat and blood pressure among heat-exposed steelworkers.Ind Health. 2016 Jun 10;54(3):215-23. doi: 10.2486/indhealth.2014-0225. Epub 2016 Apr 16.