加熱調理にはオリーブオイルを!最近になってココナッツオイルの美容や健康への効果が知られるようになってきました。なぜココナッツオイルに効果があるのか。それは豊富に含まれる中鎖脂肪酸のおかげです。ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸は60%を超えるくらいで、ヤシ油などの例外を除き、これは他を圧倒しています。さて、中鎖脂肪酸とは何でしょうか。脂肪酸は大きく分けて、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の二つに分類することができます。脂肪を形づくる3分子の脂肪酸がすべて飽和脂肪酸ならば、この脂肪は「飽和脂肪」となり、ひとつでも不飽和脂肪酸があれば、それは「不飽和脂肪」となります。では「飽和」とは?脂肪酸はCとO、つまり炭素と水素からできています。炭素原子はほかの原子と結びつくことのできる手を4本持っています。例えばステアリン酸の場合、2本の手と炭素が結びつき、残りの2本の手は水素と結びついています。すべてこのようになっているものを、「飽和脂肪酸」と呼びます。不飽和脂肪酸の場合、例えばオレイン酸だと炭素と水素が1本の手でしかつながっていないところがあります。このような構造があるものを、「不飽和脂肪酸」と呼びます。また、炭素の数が多い(12個以上)脂肪酸を長鎖脂肪酸、炭素の数が少ない(7個以下)と短鎖脂肪酸と呼びます。中鎖脂肪酸は炭素の数が中くらいなので、中鎖脂肪酸と呼ばれます。普通の食物に含まれるのは長鎖脂肪酸で、短鎖脂肪酸はほとんどが体内で作られるものです。長鎖脂肪酸は消化吸収に時間がかかるのですが、中鎖脂肪酸は鎖が短いため、非常に早く吸収されます。迅速にエネルギー化されるため、DIT反応も強く引き起こし、ある研究では通常の油に変えて中鎖脂肪酸を使ったところ、体重を多く減らすことができた(平均1.7kg)という結果が出ています。(※1)そして通常の場合、中鎖脂肪酸はβ酸化されてアセチルCoAになり、ATPの材料となります。しかしこのとき、ブドウ糖が少ないとアセチルCoAはケトン体の材料になるのです。ケトン体の材料になるため、アルツハイマーや癌に効果的だという健康への効果が発揮されるわけです。しかし重要なのは、「ブドウ糖が少ない状態」でということ。つまり普通に糖質を摂取している状態で中鎖脂肪酸を摂取しても、ケトーシスにはなりませんので、アルツハイマーや癌への効果はあまり期待できなくなってしまうのです。ローカーボ・ダイエットでこそ、中鎖脂肪酸の効果が発揮されると考えてください。また中鎖脂肪酸は発煙点が低く、揚げ物などの加熱調理には向いていません。日清オイリオのページ(※2)にも、揚げ物や炒め物には不向きです。ドレッシングやマリネなどの加熱しない調理にお勧めです。炒め物の場合は炒めた後、あら熱をとってから和えるような感じで加えてください、と表記されています。では、加熱調理に向いているのはどんな油でしょうか。4種類の油を10回再利用し、劣化の度合いを調べた研究では、オリーブオイルがもっとも安定していたことが分かっています。(※3)また長時間の加熱による酸化も少なく、栄養物質の変性も起こりにくいようです。(※4)ただし品質の低いオリーブオイルは発煙点が低くてダメです。高品質のエクストラバージンオリーブオイルは発煙点が高く、ゴマ油と同等で、キャノーラ油よりも良いとのこと。できるだけ良い品質のオリーブオイルを選ぶように心掛けたいですね。※1:Weight-loss diet that includes consumption of medium-chain triacylglycerol oil leads to a greater rate of weight and fat mass loss than does olive oil2Am J Clin Nutr. 2008 Mar;87(3):621-6.※2:https://shop.nisshin.oilliogroup.com/products/detail.php?product_id=17※3:Monitoring of Quality and Stability Characteristics and Fatty Acid Compositions of Refined Olive and Seed Oils during Repeated Pan- and Deep-Frying Using GC, FT-NIRS, and ChemometricsJ. Agric. Food Chem., 2014, 62 (42), pp 10357–10367 DOI: 10.1021/jf503146f※4:How heating affects extra virgin olive oil quality indexes and chemical composition.J Agric Food Chem. 2007 Nov 14;55(23):9646-54. Epub 2007 Oct 13