萬の事は、月見るにこそ慰むものなれ。ある人の、「月ばかり面白きものは有らじ」と言ひしに、またひとり、「露こそあはれなれ」と爭ひしこそ、をかしけれ。折にふれば何かはあはれならざらん。・・・・・・・・・・・・・・・昔の野菜に比べ、今のものは栄養価が劣っているということは、昔と今の食品成分表を比較すると良く分かります。しかしそれは農薬や除草剤を使用する生産者の問題というより、消費者側のワガママがむしろ主な原因でしょう。旬ではない時季に手に入れようとすると湿度や温度を上げたハウスでの促成栽培が必要になり、また植物も病気になりやすく、虫もつきやすくなるのです。アスリートの場合も同じことで、オフシーズンにはまともにパフォーマンスを発揮できません。筆者が指導していた野球選手はセリーグの最多安打タイ記録を出したほどですが、オフシーズンは130kmの球ですら、怖く感じてしまうと話していました。ボディビルダーの場合、年に1回だけコンテストに出るのなら問題ありませんが、これが春と秋の2回ともなると、バルクアップする期間がまったく取れなくなってしまいます。JBBFの場合だと7月に全日本クラス別があり、10月にミスター日本がありますが、これで例えばミスターユニバースが12月だったとすると、4月に減量に入るとしても、純粋にバルクアップできるのは4か月程度で、これではドラッグがどうこうという以前の問題です。またプロビルダーの場合はもっと悲惨で、コンテストが年中あるだけでなく、イベントでもスポンサーの手前、それなりのコンディションを維持しなければなりませんから、身体の休まる暇もありません。ドラッグもノンストップで使い続けることになります。野球やサッカーの場合、プロ選手はプロになったとき既に十分な能力を備えていて、プロになってから飛躍的にレベルアップするということは、そうはありません。だから長いシーズン、短いオフでも戦い抜けるのです。ボディビルの場合も同じように考えると、コンテストに出るまでに十分なバルクを付けておくほうが良さそうです。コンテストに出続けながら少しずつバルクアップしていく選手も少しはいるのですが、トップ周辺にいる選手の多くは、入念なバルクアップの期間を取り、そこから一気にスターダムに躍り出ています。入念なバルクアップ時に重要なのが、異所性脂肪を蓄え過ぎないことです。本来ならば脂肪細胞は肥大したり、細胞の数を増やしたりして余計な栄養を蓄えるのですが、急激な摂取カロリーの過剰が起こった場合、それらの方法では間に合わなくなり、通常ではありえない部位・・肝臓や膵臓、心臓、筋肉の内部に発生し、臓器に悪影響を与えます。例えば膵臓に異所性脂肪が蓄積すると膵臓の細胞が働かなくなり、インスリンが合成できなくなって糖尿病になることもあります。肝臓に蓄積すれば脂肪肝に、血管に蓄積すれば動脈硬化が引き起こされます。そこで摂取しておきたいのがEPAです。これは「SREBP-1c」と呼ばれる核内転写因子の発現を抑えたり、PPARαを活性化したり、3系統プロスタグランジンを合成したりする作用によって炎症を抑え、脂肪合成酵素を阻害し、脂肪酸のエネルギー化を増やします。青魚を多く食べたり、魚油のサプリメントを摂取したりしてEPAを採り入れ、異所性脂肪を防ぎながらバルクアップしていきましょう。