はやく跡なき事にはあらざんめりとて、人をやりて見するに、大方逢へるものなし。暮るゝまでかく立ちさわぎて、はては鬪諍(とうそう)おこりて、あさましきことどもありけり。・・・・・・・・・・・・・・・・・・「一犬虚に吠ゆれば、万犬実を伝う」と言いますが、人は自分の信じたいことを信じようとするものです。明らかにアヤシイ内容であっても、誰かがまことしやかに言っていて、それが自分の求めている内容に近いものだと、真実だとして周囲に吹聴してしまい、一気にウソが広まってしまうものです。「確証バイアス」という言葉もあります。これは自分にとって都合のよい情報ばかりを集め、反対意見を無視してしまうことを言います。多くの情報を集めているので一見科学的に見えるのですが、むしろ結果的にはその逆となります。脳が活動するときには、エネルギーが必要になります。スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグはいつも同じファッションをしていることで知られていますが、彼らは洋服選びごときに脳のエネルギーを費やしたくないのだと説明されています。ある説によれば脳は一日のうちに使えるエネルギーが決まっていて、それを「認知資源」と呼びます。(※1, ※2)難しい判断をしたり、これまでにない経験をしたり、細かい大量の作業をしたりすると、認知資源が消費されると言われます。そして脳が疲れてくると「認知的節約」が起こり、判断がおろそかになります。このような状態に陥ると、ダマされやすくなるわけです。宗教施設などで洗脳が行われる場合、ターゲットたちを身体的精神的に弱らせ、もしかしたら自分が間違っていて相手が正しいんじゃないかと考え始めたあたりで、優しい言葉をかけて身体も休ませ、洗脳内容を安定化させます。筆者はアメリカのドラマを観るのが好きなのですが、「SUITS」という弁護士ドラマでは、このような台詞がありました。「弱っているときに重要な判断はするな」。家の近くにジムができて、どんな感じかとりあえず体験レッスンを受けに行ったとします。するとジムのスタッフは、会費や営業時間、設備の説明などの他に、今やっているキャンペーンだとかジムに通うことのメリットだとか、大量の情報を投げかけてきます。そして認知資源が失われたところで、「今すぐ入会すれば・・」とやってきます。大事な判断をするときには、認知資源が回復し、脳のエネルギー・温度が良い状態になっている朝食後が良いでしょう。アメリカで行われた平均年齢21.3歳の男女33名を用いて行われた研究では、326kcalのスープによる朝食(糖質は37.7g)を食べた群は、食べなかった群よりも空間記憶と単語早期のテストに置いて、遥かに良い成績を出しています。(※3)さらに朝食と認知機能に関する38本の論文を精査したところ、朝食を摂ることは想起能力について明らかに有利だったというレビューもあります。(※4)低糖質ダイエットを行っている人の場合は、特に「カフェイン+MCTオイル」が有効です。ブラックコーヒーに発酵バターをひと匙入れ、さらにMCTオイルを5gほど。これに全卵やナッツを加えた朝食をお勧めしておきます。※1:On data-limited and resource-limited processesCognitive Psychology Volume 7, Issue 1, Jan. 1975 Pages 44-64※2:Perceptual load as a necessary condition for selective attention.Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, Vol 21(3), Jun 1995, 451-468※3:Breakfast, blood glucose, and cognition.Am J Clin Nutr. 1998 Apr;67(4):772S-778S.※4:The Effects of Breakfast and Breakfast Composition on Cognition in Adults.Adv Nutr. 2016 May 16;7(3):576S-89S. doi: 10.3945/an.115.010231. Print 2016 May.