野球なら素振り、空手なら中段正拳突き、英語の習得だったら単語の暗記など、なにかを完璧に修めようと思ったら、「基本をしっかりと身につける」ことが大事になります。では、トレーニングにおける「基本」とはいったいなんでしょうか。多くの初心者がジムに入会してすぐにやらされるのは、マシンを使ったエクササイズです。マシンは軌道が決まっていて動作がふらつくようなこともなく、重量も簡単にピンを差し入れるだけで変更することができて、指導する側にとってはとても簡単な仕事となります。しかしマシンばかりでトレーニングしていても、本当の基本を身につけることはできません。ゲームセンターでF1のマシンをどんなに乗りこなそうとも、本当の車を運転することはできないのと同じです。トレーニングの基本はなんといっても、「フリーウェイト」です。つまりバーベルやダンベルを使いこなしてこそ、中級から上級へとつながるトレーニングの道を歩んでいくことができるのです。フリーウェイトを扱うときは、「スタビライザー」と呼ばれる筋肉が使われます。軌道をスムーズに保つために細かい筋肉が動員される必要があり、それをスタビライザーと呼びます。また軌道を安定させるためには、脳から神経を通じて筋肉に届けられるメッセージが頻繁に送り届けられなければいけません。この頻繁なメッセージにより、使われる神経と筋肉の数も多くなるのです。つまり、フリーウェイトではマシンでのトレーニングに比べ、動員される筋肉の数がずっと多くなるのです。多くのトレーニーが経験していることと思いますが、マシンでのベンチプレスが強くなっても、フリーウェイトのベンチプレスの数字には反映されません。逆にフリーウェイトでのベンチプレスが強くなれば、マシンで扱える重量も明らかに伸びているものです。このようなことを考えると、指導するのが楽だからといって、また習得するのが楽だからといって、最初からマシンでトレーニングするというのはお勧めできません。いきなりフリーウェイトに挑戦したほうが、ずっと良い結果を出すことができるのです。もちろん、ちょっとダイエットしたいとか、運動不足を解消したいとかといった理由でしたらマシンでのトレーニングでも十分ですが・・。なおフリーウェイトに慣れるためだからといって、むやみに軽いウェイトで高回数のトレーニングをやらせるのも問題です。軽い重量だと正しいフォームでできても、ちょっと重くなったとたんにフォームが崩れてしまうというのでは意味がありません。ここでお勧めなのが、「アセンディングセット」でのトレーニングです。アセンディングセットというのは、使用重量をだんだん増やしながら、レップス(回数)を減らしていくというトレーニング方式のこと。たとえば、次のような感じです。ベンチプレスでのアセンディングセット1セット目:20kg15回2セット目:30kg12回3セット目:35kg10回4セット目:40kg 8回5セット目:42.5kg* 6回途中でフォームが崩れてしまうようでしたら、それ以上は重量を増やさず、同じ重量で次のセットも行うようにします。なおこの方法は前半のセットがウォームアップを兼ねることができるため、初心者だけでなく、ベテラントレーニーにとっても非常に有用です。ぜひお試しください。