老來りて、始めて道を行ぜんと待つ事勿れ。古き墳(つか)、多くはこれ少年の人なり。はからざるに病をうけて、忽ちにこの世を去らんとする時にこそ、はじめて過ぎぬる方のあやまれる事は知らるなれ。誤りといふは、他の事にあらず、速かにすべき事を緩くし、緩くすべきことを急ぎて、過ぎにしことの悔しきなり。その時悔ゆとも、甲斐あらんや。 人はたゞ、無常の身に迫りぬる事を心にひしとかけて、束の間も忘るまじきなり。さらば、などか、此の世の濁りもうすく、佛道を勤むる心もまめやかならざらん。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイデガーは、「先駆的覚悟性」と呼びましたが、徒然草の時代に同じようなことを喝破していた兼好法師には脱帽する限りです。犬や猫、猿などは高い知能を持っていますが、「生の意味を問う」のは人間だけでしょう。死からは決して逃れられず、だからこそ自らの生において何かを行い、その可能性を将来に向かって投げ企てる(投企)のです。しかしハイデガーも兼好法師も予想だにしなかった事態が、ここ最近で起こっています。それは「人は死ななくなるかもしれない」という可能性です。ラットの頭部を、他のラットに挿げ替えるという手術が成功して話題となりました。(※)ヒトの場合、脳の移植(HEAVEN)だけでなく脊髄も移植(GEMINI)する必要があるのですが、ポリエチレングリコールを切断した脊髄の修復に使うという方法が試されようとしています。挿げ替えが成功すれば、金持ちが自分の身体の予備となる若者を「養殖」するという未来もありそうで、それをテーマにした小説や漫画もいくつか存在します。そこまでアグレッシブでなくても、老化に関する研究は日進月歩で、筆者もかなり前から寿命を延ばすだろうと思われる薬やサプリメントを継続的に摂取しています。もちろん寿命延長が体感できるわけはありませんが、NR(ニコチンアミドリボシド)などは日常的なエネルギーレベルを高めてくれるようで、もっと安く買えるようになる日を心待ちにしているところです。しかしこんなことを書く筆者のことを、苦々しく思う人もいるかもしれません。20代の頃の筆者は、「40歳までに死んでも良い」と公言し、ボディビルに打ち込んできたからです。人生は短いと達観していたからこそ、突っ走ることができたのでしょう。そのお陰でそれなりの実績を残し、知識も得られて、今の仕事に活かすことができています。「俺はまだ本気出してないだけ」という漫画があって、タイトルからも分かるようにダメな中年男性の話なのですが、その中に「人生300年ということにしよう。だったら、俺はまだ子供だ。これからゆっくり巻き返せる」と自分に言い聞かせているシーンがあって、漫画喫茶のブース内で大爆笑したものです。筆者も最初から100歳まで生きるつもりだったら、ごく普通の人生で終わっていたことでしょう。それがもし不老不死だったら、どんなに長生きしたとしても、結局何事も成し遂げられないんじゃないでしょうか。限られた人生だからこそ、何かを成し遂げようとする人間がいて、そして人類が進歩する。不老不死になったら、遺伝子の乗り物であるDNAの存在意義もなくなります。子供をつくろうとする人も激減するでしょう。そして人類は停滞する・・かに思われますが、AIの進歩により、また違うルートをたどるのかもしれません。進化論が適用されるのも、ここ数十年のうちではないでしょうか。おっとサプリメントの話を忘れていました。現時点で安価に入手でき、効果の期待できるアンチエイジングサプリメントとして、「メラトニン」を推しておきます。睡眠誘発だけでなく強力な抗酸化作用や免疫強化作用、最近では骨を強化する作用なども話題になりました。40代になったら、ぜひお試しいただきたいと思います。http://www.reallife.co.jp/products/detail.php?product_id=114※A cross-circulated bicephalic model of head transplantation.CNS Neurosci Ther. 2017 Jun;23(6):535-541. doi: 10.1111/cns.12700. Epub 2017 Apr 21.