漢方薬は「医薬品」なので、具体的な使用法について細かく触れるのは問題が生じる。質問にも答えられない。また後述の通り、本来は体質によって処方を変えるべきなので、誰にでもこの内容が当て嵌まるわけではない。ここまでを踏まえたうえで、簡単に漢方薬について紹介してみたい。漢方は日本で発展した体系である。これは西洋医学である「蘭方」との比較で名付けられたものだ。中国における体系は「中医学」と呼ばれ、本来は漢方薬ではなく中医薬と呼ばれる。しかしここでは便宜上、漢方と呼ぶことにする。また日本漢方は「方証相対」と呼ばれ、症状に応じて出来合いの処方薬を与える。しかし中医学は「弁証論治」と呼ばれ、患者の体質を診て、それに対応した処方を作り出す。さて、はじめよう。まずは筋肥大のためのホルモン系。これは「腎」を補う「補腎剤」が必要だ。ちなみに「腎」というのは腎臓のことではなく、骨や歯、脳、生殖機能などを司り、生命の根幹を担っている非常に大きなくくりである。加齢や慢性病などによって腎の気が足りなくなってくると、様々な機能が低下してくるのである。補腎剤として有名なのは「海馬補腎丸」や「六味地黄丸」、「八味地黄丸」、「至宝三鞭丸」、「牛車腎気丸」など。しかし海馬補腎丸はワシントン条約の関係で本来の原料があまり入手できない。また八味地黄丸は附子(トリカブト)が入っており、胃を傷めたり、身体に熱を含ませたりする可能性がある。値段も安く、安全に使えるのが「六味地黄丸」だ。これにはやや身体を冷やす作用がある。そこで、温める作用のある「オウギ(アストラガルス)」やニンニクなどを追加すると良い。オウギにもニンニクにもホルモン活性化作用があるので、目的も合致している。次はエネルギーレベルのアップである。「やる気がでない」というときの「気」、それがまさに漢方でいう「気」であり、精神的だけでなく肉体的なエネルギーも指している。そして「気」を補ってくれる代表的処方が「補中益気湯」だ。「医王湯」とも呼ばれるこの処方は、多くの体質に効果があり、胃腸の調子が悪かったり、疲れやすかったり、どうもやる気が出なかったりする人の8割以上に効果があるはずだ。身体を温める作用があるため、六味地黄丸との相性が非常に良い。サプリメントとしてはカテコールアミンや甲状腺ホルモンの生成に重要となる「チロシン」、神経伝達物質や細胞膜の生成に重要となる「レシチン」などと組み合わせると良いだろう。注意したいのは、白朮(ビャクジュツ)を使っているかどうかである。白朮の代わりに蒼朮(ソウジュツ)を使っているメーカーがあるが、これはNGだ。