女房、「あな汚な。誰に取れとてか」など申しあはれければ、「有職のふるまひ、やんごとなき事なり」とかへすがえす感ぜさせ給ひけるとぞ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ものごとの常識は時代につれて移り変わるもので、ウェイトトレーニングも昔は一日に全身をやるのが普通でしたし、また昔はアメリカでも「ウェイトトレーニングは身体を固くする!」なんて言われていたものです。先進的な方法を採用するグループを「イノベーター」、それに続くグループを「アーリーアダプター」と呼びます。三番目に来るのが「アーリーマジョリティ」。逆に新しい方法に懐疑的で、古くからの方法に固執するグループを「レイトマジョリティ」、その酷いタイプを「ラガード」と呼びます。一見、科学的にみえる医学の世界でも、これは存在します。科学的な証拠が出そろってからでも、既得権益とプライドが大きく関係するこの世界においては、先進的な方法をなかなか採用しようとしません。むしろバイアスのかかった論文を発表させて、それまでの古い治療法を継続させようとします。今では医師が処置をする前に手を洗うのは常識ですが、19世紀中ごろまでは、「医師は紳士である。紳士は清潔である。だから手を洗う必要はない」とされていました。センメルヴァイスが手洗いによって産褥熱(出産時に菌が入って全身に広がる病気)による死亡率を激減させてからも、周囲はそれを非難糾弾して認めようとせず、彼は職を追われて精神病院で生涯を終えたそうです。医師たちは「医師自身の手が患者を殺していた」ということを受け入れようとしなかったのです。メガビタミンも、その経路をたどっています。ビタミンC大量摂取の効果は1940年代から知られるようになり、少数の医師たちが採用しはじめましたが、医学界からは無視されました。ショーペンハウアーは、「新しい方法が出てくると、最初は無視され、次に反駁され、最後には自明だった(最初から分かっていたことだ)として処理される」と言いました。ビタミンCもその例に漏れず、無視された後は「結石ができる」などといって否定されましたが、それがウソだということが圧倒的な数の証拠によって証明され、今ではビタミンCの安全性は疑いのないものとなっています。安全性ではなく、効果はどうでしょうか。ビタミンB群やビタミンCの効果は日本でも少数の医師たちによって広められようとしていますが、ビタミンDの効果は既に多くの医師たちが認めようとしているところです。脂溶性であるビタミンDはメガビタミン派からプッシュされてこなかったのですが、だからこそ他の医師たちから受け入れられたのではないか、というのは穿ち過ぎでしょうか。先進的な医師たちはアンチエイジングのためにビタミンDを一日5000IU程度摂取していることが多く、またナイアシンの誘導体であるニコチンアミドリボシドが長寿に与える影響も大きな期待がもたれています。この二つを皮切りに、他のビタミン類の大量摂取が一般的になってくると良いのですが。