筋電図測定の結果を基にした事前疲労法に関する考察を、以前に載せたことがある。結論としては、「事前疲労法はむしろ補助筋を使って挙げてしまうため、あまり意味はない」というものだった。知らない方のために説明すると、例えば「レッグエクステンション→スクワット」の順で行うのが事前疲労法である。普通にスクワットをやると、大腿四頭筋だけでなくハムストリングや大殿筋も使われる。そこで先にレッグエクステンションで大腿四頭筋を疲労させ、次にスクワットをやる。そうすれば大腿四頭筋を集中的に刺激できるというのが狙いである。しかしそう上手くはいかず、レッグエクステンションで大腿四頭筋が疲れた状態でスクワットをやると、大腿四頭筋ではなくハムストリングや大殿筋で挙げてしまおうとするため、結局大腿四頭筋への負荷は強くならないという結果であった。むしろ使用重量が軽くなるため、効果が減少する可能性すらある。さて「逆」事前疲労法(筆者の勝手なネーミングだが)では、それを逆手に取る。つまりハムストリングや大殿筋を鍛えるために、先にレッグエクステンションをやるのだ。そうすればスクワットをやるときに、ハムストリングや大殿筋への刺激が強くなるという寸法である。この場合、レッグエクステンションの目的は「大腿四頭筋を疲労させること」となる。つまり筋肥大目的ではなく、ただ疲れさせるだけでよい。ハイレップスで短インターバル、大腿四頭筋をパンパンにした状態でスクワットに移るわけだ。そうすればハムストリングや大殿筋を使うフォーム、意識とならざるを得ない。レッグエクステンションの後にスクワットを4セットやるとする。最初の1~2セットでハムストリングや臀部を使う感覚をつかむ。そして3セット目、4セット目には、レッグエクステンションの疲労が抜けてくる。ここでスクワットの重量を増やしてみる。すると、重い重量でもハムストリングや臀部に効かせられるようになるというわけだ。そう、これは意識の習得に特に有効だ。初心者にスクワットを教えると、フォームはなんとかできているのに、どうしても大腿四頭筋ばかりに意識が向いてしまうことがある。このようなときに「逆」事前疲労法を行うと、ハムストリングや大殿筋を使う感覚が意識できるようになることが多い。一度意識ができるようになれば、しめたものである。フォームも自然と狙った筋肉に効くような軌道になってくるものだ。初心者のクライアントに手を焼いているトレーナーにもお勧めのテクニックである。背中のトレーニングで二頭筋ばかりに効いてしまうような場合も、「逆」事前疲労法は有効である。先に二頭を疲れさせ、その後でプルダウンやロウイングを行わせる。二頭がヘロヘロの状態でやると、背中の筋肉を使う意識ができるようになるわけだ。同様に胸だったら、先に三頭を疲れさせる。もちろんスクワットの場合もプルダウンの場合も、ちゃんとしたフォームで行うことが前提である。ダメなフォームでやっても、補助筋が余計に疲れるだけで意味はない。