すこしの事にも先達(せんだち)はあらまほしきことなり。・・・・・・・・・・・・・・・・・知ったかぶりをして恥ずかしい失敗をするということは、初心者よりむしろ経験者の方に多いものです。この五十二段だけでなく、ブルース・リーも「中途半端に格闘技をやっている者が一番弱い」と言っていますし、三国志で孔明が馬謖を「生兵法!」と斬って捨てた故事も有名です。ちょっとジムを見渡せば、何年もトレーニングしているのに全く身体が変わっていない人を何人も見つけられます。もちろん上級レベルになれば発達速度は停滞しますが、中級レベルで留まっている人があまりにも多いことには、何らかの理由があるはずです。理由の一つが、「自分のやり方にこだわり過ぎること」でしょう。雑誌やネットで情報を仕入れ、いろいろと試しはするものの、そのまま適用することはせず、必ず自分のオリジナルテイストを入れてしまいます。「ジャーマンで10回10セット」とあれば「では15セットやろう」としたり、「ネガティブが効果的なので3回に1回程度は取り入れるべき」と聞けば、「毎回ネガティブをやろう」としたりします。筆者は料理をほとんどしませんが、料理下手のエピソードを聴くたびに、「レシピ通りにやって、なぜ不味くなるのだろう」と不思議に思っていました。その真相は「勝手にレシピを変えてしまうから」のようです。必要もない隠し味を追加するのだとか。別の理由としては、「反省しないこと」でしょう。オリジナルテイストを加えたり、自分で考えて試行錯誤したりするのは楽しいものですが、結果が伴わない場合は、何かが間違っているのだと気づくべきです。間違いに気づいて変更を加えれば発達の可能性が残されているのですが、彼らはそうしません。十年一日のごとく、同じトレーニングを繰り返しています。自分のやり方にこだわったり、反省しなかったりするのは元々のプライドの高さも関係していそうですが、エンセファロパシーの可能性もあります。エンセファロパシーとは脳障害のことです。ビタミンB1が足りないと脚気になることは知られていますが、これは末梢神経や筋肉に影響が出た場合です。脳に影響が出る場合もあって、これをウェルニッケ脳症と呼びます。ウェルニッケ脳症の後遺症として「コルサコフ症候群」というものがあり、その症状として「イライラする」とか「判断力が鈍る」、「他人の足を引っ張る」、「忘れっぽくなる」、「平気でウソをつく」といったものがあります。最近ではワークアウトドリンクに糖質を入れるトレーニーが増えてきて(筆者の影響かもしれませんけど)、ビタミンB1の要求量も増加しています。潜在的な脚気になる前に、ビタミンB1の補給を忘れないようにしたいものです。