二つのエクササイズを連続で行うことを「スーパーセット」あるいは「コンパウンドセット」と呼ぶ。同一筋群なのか拮抗筋群なのかで呼び方を変えることもあるようだが、ここでは便宜上、どちらも「スーパーセット」で統一することにしよう。拮抗筋群を組み合わせる場合は相反神経支配による回復促進が期待できるが、同一筋群でスーパーセットを行う場合のメリットはなんであろうか。一つには、「事前疲労」効果である。例えば上腕三頭筋が弱い場合、ベンチプレスをやっても大胸筋が疲弊する前に上腕三頭筋がオールアウトしてしまい、大胸筋を追い込み切れない。そんなときは、先にダンベルフライを行って大胸筋を事前疲労させてから、ベンチプレスを行うようにする。そうすれば、完全に大胸筋を追い込むことができる。また、「スティッキングポイントの違うエクササイズを組み合わせることにより、可動域全般に渡って強い負荷を与える」ことができる。例えばインクラインカールをやってからすぐにコンセントレーションカールを行えば、ストレッチポジションとコントラクトポジションの両方で強い負荷をかけることができる。これらのメリットを上手く応用すると、バルクアップのヒントが見つかる。すなわち、「高重量低回数のエクササイズを連続で行う」のである。具体的には、2~4回しかできない重量でのエクササイズを2連続で行う。合計で48レップス。通常、2~4回だとTime under Tensionの関係で筋肥大より筋力向上に向いているとされるが、この方法なら筋力だけでなく、筋肥大も狙うことができるわけだ。上記の例で言えば、ダンベルフライを24回やったらすぐにベンチプレスを24回行う。もちろんどちらもそのレップスがギリギリになるような重量でやる。これはアイソレーション種目を先に、コンパウンド種目を後にやる事前疲労法。またインクラインカールをやってからコンセントレーションカールを行うのは、スティッキングポイントを変えてどちらも高重量を実現する組み合わせとなる。上腕三頭筋の場合だったら、ストレッチ系のエクステンションを行い、その後にディップスやナローベンチで収縮時の負荷をかけるようにするといいだろう。もう一つ、「化学的刺激」を与えるためにもこの方法は有効だ。一般的にハイレップスを行うと補助筋が先に疲れてしまう。この場合は逆に、先にコンパウンド種目を行ってからアイソレーション種目を行うようにしよう。例えばスクワットを20回やったら、すぐにレッグエクステンションを20回やるという具合だ。これが逆だと上手くない。ハイレップスの場合、先にエクステンションをやってからスクワットだと、スクワットのときにハムや臀部を使って挙げてしまおうとするからだ。高重量での事前疲労法なら、そうはなりにくい。最近ではあまり行われていないスーパーセットだが、それは「810レップス*2」、というように中途半端な組み合わせでやるため、効果が見られなかったからだろう。このような工夫を採り入れることで、スーパーセットの復権が見られるかもしれない。