・・・・・・・・・・・・深ふかく信を致いたしぬれば、かゝる徳もありけるにこそ。・・・・・・・・・・・・イワシの頭も信心から、とは云いますが、プラセボ効果はバカにできないもので、ダメなトレーニングであっても信じてやればそれなりに効果は出ますし、怪しいダイエットでも信じ込むことでカロリー神話の枠を超え、本当にダイエットできることもあります。プラセボ効果は人間だけにあると思われがちですが、理化学研究所の実験で、ラットに4日間鎮痛剤を投与し、5日目に生理食塩水を投与したところ、鎮痛効果を感じる個体が生じたそうです。これは脳の対側の前頭前皮質内側部(mPFC)などの領域におけるミューオピオイド受容体による作用だと考えられ、その部位を破壊したところ、プラセボ効果はみられなくなったということです。(※1)なお霊長類では背外側前頭前皮質(dlPFC)が、プラセボ効果における予測や期待感に関与するといわれています。(※2, ※3)プラセボを言い換えると、予測や期待感が脳に作用し、それがメリットを引き起こすということになります。二頭筋のトレーニングをすると二頭筋のみに局所的なストレスが与えられ、それが二頭筋の発達を促すというのが一般的な考え方ですが、なんらかの操作によって二頭筋のトレーニングをしたときに脚のトレーニングをしたと脳に感じさせれば、二頭ではなく脚の筋肉が発達するという現象が起こる可能性もあります。また「これはゼロカロリーだ」と信じ込ませて食事を与え続ければ、実はオーバーカロリーでもダイエットができるのかもしれません。これは実験することが可能で、14名(BMI27以上)を対象に二つの群に分け、どちらも摂取カロリーは同じにして、A群には「カロリー不足の食事」だと伝え、B群は「バランスの良い食事」だと伝えました。(※4)その結果、A群はみごとに体重と体脂肪が減ったのです。B群は有意な変化がありませんでした。これもまたカロリー神話をみごとに覆す結果となりました。逆に考えると、「私は意志が弱くて、ダイエットが苦手だ」と思っている人は、実際に摂取カロリーを少なくしていても、なかなか痩せられないのかもしれません。強い意志を担うのはテストステロンです。テストステロンそのものが脂肪燃焼に効果をもたらしますが、「私は意志が強い、だからダイエットも成功する」と思わせる力がテストステロンにはあります。女性がダイエットを失敗しやすいのは、そのせいかもしれません。テストステロンを増やす方法はいろいろありますが、男性も女性も「亜鉛」と「ビタミンE」は十分に摂取しておくべきです。なかなかダイエットが上手くいかない人も、亜鉛とビタミンEで改善できる可能性が十分にあります。※1:A voxel-based analysis of neurobiological mechanisms in placebo analgesia in ratsNeuroImage, 10.1016/j.neuroimage.2018.06.009※2:The role of the dorsolateral prefrontal cortex in the motor placebo effect.The European journal of neuroscience 20181201 Vol. 48 issue(11)※3:Frontal-Brainstem Pathways Mediating Placebo Effects on Social RejectionJ Neurosci. 2017 Mar 29; 37(13): 3621–3631.※4:Studying a Possible Placebo Effect of an Imaginary Low-Calorie DietFront Psychiatry. 2019; 10: 550.