近き火などに逃ぐる人は、「しばし」とやいふ。身を助けむとすれば、恥をも顧みず、財(たから)をも捨てて遁れ去るぞかし。命は人を待つものかは。無常の來ることは、水火の攻むるよりも速かに、遁れがたきものを、その時老いたる親、いときなき子、君の恩、人の情、捨てがたしとて捨てざらんや。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・筆者の周りには「社長」と呼ばれるような人が多いのですが、彼らのすべてが高学歴かというとそうでもなく、むしろ学歴の高い人を社員として使っているような印象があります。誤解を恐れずに言えば、学歴が低い人は失うものも少なく、失敗することを怖れず、思い切ってアイデアを実行することができるということでしょう。しかしもちろんその全員が成功するわけでもなく、成功するかどうかのカギを握るのは、彼らが学歴の高い(≒頭が良い)仲間を上手に使えるかどうかにかかっています。逆から見ると、行動力の少ない高学歴者は他人に行動させることによって、少ないリスクでそれなりのリターンを得ようとするわけです。同じことが、実はトレーニングにおいても言えます。世界のトップに立つような選手は、それほどトレーニング内容を吟味しているわけではありません。いろいろと試しながらではあるものの、基本的には自分の直観に従ってトレーニングしていきます。しかしそこは素質で淘汰され、飛びぬけた素質を持っていて、かつ積極的にトレーニングに打ち込むことのできる選手だけが生き残っていきます。逆にトレーニング理論に振り回されてしまう人は、トップにまではいけません。しかし理論を吟味し、周囲のトレーニーたちの反応などを分析しながら自分のトレーニング法を導き出すことにより、極力無駄を省いた状態でハイレベルなところまで持っていくことができます。なによりも重要なのは行動力であり、それに理論の裏打ちがあれば言うことはありません。では、行動力をつけるにはどうすれば良いのでしょうか。ヒトの情動は大脳辺縁系、理性は大脳新皮質が担っています。そして大脳辺縁系の中でも特に「側坐核」というGABAを産生する部位が「やる気」に関係し、ここにドーパミンが働くことで報酬系が活性化してやる気が出てくると言われます。ドーパミンの材料としてはチロシンとフェニルアラニンがありますが、フェニルアラニンはトリプトファンと競合する面があるので、ここではチロシンを重視したいところです。またチロシンがドーパミンになるまでにビタミンB6やナイアシン、葉酸、鉄などが必要になります。やる気のある人、行動力のある人は、もともとチロシンをドーパミンにする酵素活性が高いものと思われますが、普通の人もチロシンやビタミンB群の摂取量を増やすことでやる気を増すことは可能だと思われます。「マインドセットを変えよう」みたいな啓発系ビジネスもありますが、まずは栄養条件を見直すことからはじめてみてはいかがでしょうか。